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Vol.15 親知らず

最終更新日:2011年11月10日

親知らずって何なの?

 親知らずは、個人差はありますがほぼ16歳~20歳前後から生えてくる大人の歯です。一番最後に生えてくる大人の歯で昔は、生えてくる時期が親の亡くなる頃と重なるため親知らずと言われるようになったみたいです。

 最近の子供は、人類の進化(退化)、もしくは、軟食文化により噛む回数が減少することによって顎の骨が小さくなり、親知らずが斜めに生えたり、真横に埋まっていたり、完全に顎の骨の中に埋まっている状態のものが多くなってきています。また、親知らずがもとから無い子供や、他部位の大人の歯が無い子供も見かけます。逆に極稀ですが、時代と逆行して親知らずの奥にもう一本歯が生えている人もいます。原始人並の顎をしている人です。

親知らずは抜いたほうがいいの?抜かないほうがいいの?

 よく、ある質問です。まず抜く、抜かないを考える前に今現在痛みがあるか?ムシ歯になっていないか?周りの歯茎が腫れているのか?をチェックしてください。あてはまるようなら、抜くことをお勧めします。では、今痛みがなくて、ムシ歯でもなく、歯茎も腫れていない場合は、どうするか?お近くの歯科医院、もしくは口腔外科の歯医者さんに診てもらいましょう。親知らずの生え方や、生えている位置、歯の埋まり方を診てもらい、抜くことが必要なのか、判断してもらいます。

 余談ですが、近年再生医療が発達し、親知らずの神経細胞から様々な組織(皮膚や筋肉等)を作る研究が盛んに行われています。しかしながら、ムシ歯や細菌に犯されていない親知らずの神経細胞のみ有効です。それに、再生医療に使用するには、特殊な保存方法が必要で現在福井にはその設備がありません。もし、再生医療に使いたいときは、その設備が整っている歯科医院に行くか、抜かないで、ムシ歯にならないようにしてください。近い将来役立つときが来るでしょう。

 それから、全身的な病気がある人、例えば、心臓病、肝・腎臓病そして、体の抵抗力の弱い人等は親知らずの周囲の細菌が原因で心内膜炎(心臓に細菌が繁殖する病気)になったり、肝・腎臓病の人は、腫れても抗生物質が飲めなかったり、抵抗力の弱い人は菌血症や、敗血症を併発したりします。怖いことを言うかも知れませんが、親知らずが原因で命を落とす可能性もあります。全身的な病気のある人は早めにお近くの歯医者さんに相談してください。また、妊娠中の女性の方は、親知らずが腫れたり、痛みが出た時に、簡単に抗生物質や鎮痛剤を飲めません。なぜなら、鎮痛剤は、胎児奇形を発生させる割合が高くなるからです。また、抗生物質の種類によっては、おなかの子の歯に色がつく可能性があります。妊娠期間中、ずっと苦痛を味わうことになるので、女性の方は、妊娠前に歯科検診等を受け、歯科医院で親知らずの状態を診てもらったほうがよいでしょう。今現在妊娠されていて、親知らずが痛い、腫れてる方は、安定期であればある程度の処置は可能です。産婦人科の先生と相談の上、歯科医院を受診してください。

親知らずを抜くのは怖いよぉ~

 親知らずを抜くと痛いし、パンパンに顔がはれるぞぉ~、と脅かされ抜くのを断念した話をよく聞きます。確かに痛みもでやすいし、顔も腫れ易いです。しかしそれはすべての人に当てはまる訳ではありません。親知らずを抜いた後、腫れ易いのは化膿している親知らずを抜いたり、骨の中に完全に埋まっているものを抜いたり、抜いた後よくしゃべったり、カラオケしたり、お酒を飲んだり等、顎を動かすことをすると翌日腫れ易いのです。それに、上の親知らずより、下の親知らずの方が腫れ易いのです。もし、上下左右4本の親知らずをお持ちなら、まず、上の親知らずから抜くことをお勧めします。なぜなら、上の親知らずは、抜き易いし、腫れにくい、痛みも少ないからです。上を抜いた後に下の親知らずを抜くのが最良でしょう。抜くのが難しい歯は後回しです。ただ、個人差はありますので、歯医者さんとよく相談してください。

親知らずはどうやって抜くの?

 上の親知らずは比較的簡単に抜けます。まず、麻酔を行い、へーベル(挺子、エレベータ)と言われる歯を脱臼させる道具を用いて、顎の骨と歯を少しずつ剥がしていきます。歯と顎骨は歯根膜といわれる繊維でつながっています。その繊維をゆっくりと切断するわけです。このとき繊維の切れるミシミシとした音が伝わってきますが、麻酔がかかっているので、痛くはありません。(下図)抜いた後は上の場合、縫うことはまれで、ほぼ、1週間程で自然に穴がなくなります。(歯を抜いたクレータ状の跡は3~4ヶ月で平らになります。)

親知らずってどうやって抜くの?1993、学建書院、「これからの抜歯」から

《1993、学建書院、「これからの抜歯」から》

 問題は下の親知らずです。下の親知らずは骨の中に完全に埋まっているか、半分だけ埋まっていることが多いです。また、横向きに生えていたり、斜めに生えていたり、様々です。(下X線参照)ですから、下の親知らずを抜く場合は歯茎を切ったり、骨を少し削ったりします。

埋まった下の親知らずのX線写真1993、学建書院、「これからの抜歯」から
 【埋まった下の親知らずのX線写真】

《1993、学建書院、「これからの抜歯」から》

  また、下の親知らずは歯を割って抜くこともあります。そのままでは、前の歯に引っかかってしまい抜くことができないからです。

 歯茎を切ったり、骨を削ったり、歯を分割したりする訳ですから、腫れない訳がないのです。そして、一番厄介なのが下あごの骨の中にある直径5mmほどの神経の束です。解剖学的に下歯槽神経と呼ばれる神経です。この神経は喉のあたりから下あごの骨の中に入り、下の親知らずの根の先をかすめ、下の糸切り歯の根の先後方あたりで下あごの骨の中から出てくる神経で、下の歯の神経や唇、下唇のまわりの皮膚感覚を支配しています。また、神経と一緒に動脈、静脈も走行しています。下の親知らずを割るときにこの神経に傷をつけてしまうと、麻酔からさめても下唇の感覚が鈍くなったり、まったく感じなくなったり、大量の出血を起こします。もし、下の親知らずを抜いて麻酔がさめても、下唇周囲に変な感じが残っているときは、早めに歯医者さんに連絡を取ってください。神経の復活剤を処方してもらいましょう。神経の損傷は時間が経つと回復する可能性が低くなります。神経の復活剤として使われるのは、ビタミン剤などです。個人差はありますが、神経を切断しないかぎり数週間~数年で必ず元にもどります。

「これからの抜歯」から 分割方法

 《1993、学建書院、「これからの抜歯」から》

 

親知らずを抜いた後、家に帰ってから痛い、血が止まらない、腫れてきた!

 親知らずを抜き終わって歯科医院を出るときは、まだ麻酔が効いていて感覚がなく、痛みもそれほど無いでしょう。個人差はありますが、上の親知らずの麻酔は1時間ほど、下の親知らずの麻酔は1時間30分から2時間ぐらいで、切れてきます。ちょうど、自宅につく頃になると麻酔が切れ、じわじわ傷みがでてきます。親指の頭ぐらいの大きさの歯を抜いたわけですから、痛みが出るのは当然です。ただ、この痛みは歯医者さんで出してもらった痛み止め(鎮痛剤)を飲めば、ほぼ治まります。できるなら、麻酔が切れる前に痛み止めを一回飲んでしまいましょう。そうすると、麻酔が切れる頃には痛み止めが効きだして、それほど痛まずにすむはずです。では、痛みが止まらない場合は、どうしたらいいか?痛み止めを飲んでも痛みが止まらない時はもう一回痛み止めを飲んで抜いた部位を保冷剤や、冷えピタシールなどで冷やしてください。冷やすことによって痛みが和らぐことがあります。それでも痛みが取れないときは、可能であれば歯科医院に連絡を取って下さい。歯医者さんから適切な処置を聞くとよいでしょう。尚、痛み止めを続けて2回飲んだときは最低でも4時間は時間を空けて次の痛み止めを飲んでください。つづけて痛み止めを飲むと胃の粘膜がただれるので薬剤性の胃炎や、胃潰瘍を起こします。注意してください。

 また、血が止まらないときもあります。抜いた直後に血が止まっていても、帰宅した後から出血する場合があります。唾液と血が混ざり血がたくさん出ているように感じますが、そのときは、あせらず、まずは血がどのように出ているのか確かめてください。心臓の鼓動のように「ドク、ドク」出ているようだったら、動脈性の出血なのですぐに歯科医院に連絡を入れてください。一方、「ジワ、ジワ」出ているようであれば、静脈性の出血なのでガーゼもしくはティシュ等をまるめて、血の出ている部位で強く20分~30分噛み続けてください。たいていの出血は止まります。この時も抜いた部位を冷やすと血管が収縮し血が止まりやすくなります。血が出ている最中は口の中が血の味で気持ち悪くなります、気持ち悪いからと言って、何回もうがいをする人がいます。何回もうがいをすることによって、せっかく固まりかけていた血が溶けてしまい、また出血します。できることなら、うがいはしないで、口の中に溜まった血のみを吐き出しましょう。そのほうが、出血を止められます。

 だんだん、腫れがひどくなってきたときはどうするか?これもまずは冷やしてください。決して湿布薬は貼らないでください。腫れが増します。腫れの原因は歯を抜く際に骨を削ったり、無理な力が骨に加わったためです。それと、下顎の場合、血が溜まって腫れる場合もあります。骨の処置をすると、どうしても腫れ易いです。たとえば、骨折や捻挫をしたときに腫れるのは骨に過大な力がかかったからです。腫れるその他の原因としては、歯を抜いた後、長時間しゃべったり、抜いた後痛くないからカラオケに行って何曲も歌ったり、お酒を飲んだりする、タバコを吸ったりすると、たいてい、次の日はパンパンに腫れあがります。ですから、親知らずを抜いた日は、安静にしてください。一応、歯を抜くことは簡単な手術に入りますので。

 以上、親知らずについて、ざぁーっと説明しましたが、わからないことや、相談はもよりの歯科医院を受診してください。

(丸田歯科 丸田英洋 先生)
 

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福井市歯科医師会

※ 本文は歯科医療の観点より記載されております。

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福井市 福祉部 子育て支援課
電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
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