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Vol.2 アトピー性皮膚炎と漢方(その2)

最終更新日:2010年7月25日

痒がる男の子のイラスト 今回も引き続いて、アトピー性皮膚炎(前回はADと略しましたが分かりにくいので今回はアトピーとします)と漢方についてお話しします。前回は主に西洋医学的にお話ししました。漢方の話を聞きたいのに!ステロイドなんて嫌い!という人も、是非vol.1に目を通してくださいね。 

 現時点で考えられる、アトピーの発症・悪化の原因には、低年齢では食物(卵・牛乳・小麦など)、汗、乾燥、掻破(かきむしること)、物理化学的刺激(服や物でこすれる、洗剤や薬品的なものの接触など)、ダニ、ほこり、ペット、細菌などの病原体があげられます。高年齢ではこれらに加え、ストレスなどの関与が考えられています。これらは主に外的な要因、環境による要因ですが、やはり遺伝的要因、いわゆる体質も関係していると考えられています。 

 ここで、漢方的な見地からこれらを考えてみましょう。使われる言葉や漢字が難しいので、ちょっと想像力が必要になります。子どもさんの影響でポケモンが好きな方、たとえば、ほのおのポケモンとか、みずのポケモンとか、性質をイメージするつもりで、以下のところを読んでみてください。 

 漢方医学には、体に影響して悪いことを起こすものを邪〈じゃ〉(または邪気〈じゃき〉)という概念で考えます。風、寒、暑、湿、燥、火(あるいは熱)という邪があって、それぞれ名前から想像できるような性質をもっているとされています。人間の体は本来、病気に負けないパワーとして正気〈せいき〉というエネルギーをもっていて、これら邪に負けないようにいつも頑張っています。しかし、正気が衰えたり、邪気が強すぎたりする場合には、邪に負けて体に症状がでてきます。これらの邪は主に体の外からやってくる外邪とよばれるものですが、体内に起こってしまうものもあります。

 さて、先に挙げた邪の中でも、たとえば風邪〈ふうじゃ〉は、風のように急にやってきて症状を起こします。外からやってきた風邪や中で生じた風邪が、風のように体を巡って、かゆみを起こすとも考えられています。風邪は、特に体の上部や表面(皮膚など)に悪さをします。火邪〈かじゃ〉(熱邪〈ねつじゃ〉)は、まさに熱をもったような症状を出させるもので、炎症などを含みます。なんらかの原因で正気が衰えているとき、このような邪に対抗できなくなると、かゆみ、炎症が起こってしまう・・・防御のパワーがないと敵が繰り出すかぜの技やほのおの技にやられてしまうわけです。

 また、食物アレルギーをもっているお子さんの多くは、アトピーを併せ持っています。これは、消化管の機能が弱いために関連して起こると考えられています。つまり、卵アレルギーなどがあると、回りまわって皮膚にまで症状が及ぶというのです。漢方では消化管の機能が弱いと、正気がうまく作られないと考えます。正気が衰えると先のような外邪に侵入されやすくなりますし、そもそも消化機能が悪いので、食べ物から体の内部に湿熱という邪が生まれてしまうことがあります。こうなると、皮膚にはジクジクしたり赤みを帯びたりする湿疹が起こる、と考えられているのです。 薬のイラスト1

 聖なるパワー正気と、邪悪なパワー邪気のバランスがイメージできましたか? 

 では今度は、治療を考えてみましょう。風邪〈ふうじゃ〉が悪さをしている!なら風を取り去ろう、熱邪が原因だ!なら熱を冷まそう。湿邪がはびこっている!なら湿を取り除こう、これが漢方医学のやり方です。

 前回挙げた、小児のアトピー性皮膚炎に使われる代表的な処方のうち、たとえば消風散〈しょうふうさん〉は、名前の通り風邪(および熱邪、湿邪)を消し去るお薬です。黄連解毒湯〈おうれんげどくとう〉は、主に熱毒(熱邪のひどいやつ=体内に滞る強い炎症)を解毒する、とでもいいましょうか。乳児のアトピーでよく用いる補中益気湯〈ほちゅうえっきとう〉は、胃腸の正気パワーを強くして、邪に打ち勝とうとするお薬と考えていいでしょう。 

 私達が診療する際、このようなイメージを使って、病気の原因を考えたり治療したりしているのです。ちょっと面白くありませんか?(つづく)

文責 三重大学附属病院漢方外来担当医 高村光幸

《参考文献》
EBMアレルギー疾患の治療2010-2011(中外医学社)
医学生のための漢方医学基礎編(安井廣迪・東洋学術出版社)
三大法則で解き明かす漢方・中医学入門(梁哲成・燎原)
アトピー性皮膚炎の漢方治療(東洋学術出版社)

お問合せ先

福井市 福祉部 子育て支援課
電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
最終更新日:2010年7月25日

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