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Vol.9 花粉症と漢方

最終更新日:2011年2月25日

ハッカ 花粉症シーズンに入りました。昨シーズンは少なかったのに比べ、今シーズンは大量に花粉が飛ぶとか。嫌ですねぇ。私も花粉症です。何を隠そう私が漢方に本格的に興味を持ったのは、花粉症に対しての漢方の効果を実感したことがきっかけでした。

 7年ほど前、認めたくなかったけれど、花粉症の症状が現れました。その後、血液データもそれを示唆する値が出て、ついに認めざるを得ませんでした。花粉症の基本薬剤は、通常抗ヒスタミン薬になりますが、コーヒーを飲んでも眠くなる私は、抗ヒスタミン薬で眠気を来すのが嫌で、特に日中に仕事で眠くなるのを避けたかったことや、鼻閉に対して直接鼻にスプレーする薬剤も、キリがないので使いたくありませんでした。代替案を探していたところ、かつて興味があったけれど難しくて手を出せなかった漢方を、冷やかし半分で服用しました。別に自分に使う訳ですし、効いたら儲けもの、くらいの軽い気持ちで小青竜湯(ショウセイリュウトウ)を一服。するとどうでしょう、ぼよーんと詰まっていた鼻の粘膜が、すーっと引いていくのを感じるじゃありませんか。まさにぼよーんが、すーっです。それも服用して数分以内、みるみる通りの良くなる鼻に、本当にびっくりしてしまいました。血管収縮剤の点鼻薬を差した瞬間に類似した速効感です。これは大げさな表現でなく、本当に感じたことです。今となっては漢方推進派ですから、声高に主張しても、にわかに信じてもらえないでしょうけれど。服用して、まだ胃から吸収されていないような短時間に何故効くのか、この疑問にはまだ答えられませんが、花粉症症状に対する効果のエビデンスも出てきており、少なくともプラセボ効果(偽薬効果:何の薬効ももたない偽薬を、薬だと思って信じて服用することで、心理的精神的な影響で何らかの作用が起こること)ではなさそうです。ただ、これだけでずっと対処できるわけではありません。頓服的に何度も服用したり(若い人は大丈夫ですが、高齢の方にはお勧めしません)、症状をみていろいろ薬を変えてみたりする必要があります。

 特に、小青竜湯はくしゃみや、透明でさらさらの鼻水のでるタイプの症状には有効です(体の中に水っぽいものが溜まっている状態に使う方剤なのです…イメージは白っぽい鼻水やむくんだ鼻粘膜の感じ)。麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)という方剤を使うこともあります。しかし、炎症が長引いたりして、鼻の粘膜の充血腫脹が高度になったり、出血するようなときは(イメージは粘膜が赤っぽくてちょっと色のついたネバネバ鼻水の感じ)、麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)などを使う必要がでてきます。これは、おおまかに言うと、寒い(白い)感じには温める薬、熱の(赤い)感じには冷ます薬、という漢方の基本原則に則っています。でも、実際は両方同時に存在することが多く、現に私も、小青竜湯麻杏甘石湯を交互に、または同時に服用してしのいでいます。これで眠気は起こらず、診療に差し支えありません。

 さて、今起きている症状を緩和するには上のような方剤を使いますが、そもそも花粉症が起こる体質を改善しないと、漢方でいう本治(ほんち=根本的治療)にはなりません。今のところ自分で克服できていないので大きなことは言えませんが、よく言われているのは、甘味料の摂りすぎにより、体に水滞(すいたい)や冷えを生じているという内的要素があるために、アレルギー性鼻炎を起こしてくるというものです。水滞とは、体内に過剰な水分の停滞、停留がある状態を指し、痰飲(たんいん)ともいいます。体内の水分調節に関係するのは、脾(消化機能)、肺(呼吸機能)、腎(生命力、免疫力)と考えられ、これらを健全に保つ必要があります。上記のように、甘味料であるケーキ、甘い缶コーヒー、ビール、果物、ジュース(冷たく甘いもの)などをとりすぎないことが、まず養生として重要です。心当たりのある人も多いはずです。これに加え、花粉症シーズンでない時期に、脾肺腎を整える漢方(補中益気湯八味地黄丸など)を服用していくことが、花粉症を克服するために役立つかも知れません。漢方を学ぶものとして、是非漢方で花粉症を克服したいものです。 

文責 三重大学附属病院漢方外来担当医・小児科専門医 髙村光幸

《参考文献》
医学生のための漢方医学基礎編(安井廣迪・東洋学術出版社)
モノグラフ漢方方剤の薬効・薬理(丁宗鐵・鳥居塚和生、医歯薬出版株式会社
弁証図解漢方の基礎と臨床(高山宏世編著、三考塾)
山本巌の臨床漢方(板東正造編著・メディカルユーコン)
いかに弁証論治するか(菅沼栄著、東洋学術出版社)

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最終更新日:2011年2月25日

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