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Vol.10 花粉症と漢方(2)

最終更新日:2011年3月25日

カッコン 花粉症シーズンまっただ中です。この原稿を書いている3月中旬現在、福井市の花粉飛散量は、3シーズン前のものとよく似ているようで、少なかった前シーズンよりは多く、ものすごい飛散量だった2シーズン前よりは今のところ少ないようです。

 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)、麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)などの、どちらかというと温める方剤と、麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)などのどちらかというと冷やす方剤のお話をしました。細かい使い分けはなかなか難しいところがありますが、上手に組み合わせることで、かなりの効果が期待できます。このコラムは、医師の処方箋に基づいた治療法を原則として説明していますので、皆様が独自で判断されるときは副作用などに十分注意して頂く必要があることは、改めてここで申し上げておきます。たとえば、麻黄附子細辛湯は、麻黄と附子と細辛という生薬の組み合わせで、そのままの名前ですが、麻黄の作用で目がさえたり(一般的な抗アレルギー薬の副作用として眠気がありますが、漢方は眠くならないというお話は前回もしました。かえって目がさえて眠れないという方もまれにみられます。このコラムの想定読者層である小さいお子さんをお持ちの年代は、まず気にしなくてよいと思われますが…)、すごく胃の弱い人は胃の調子を崩したりしてしまう場合があります。胃薬の生薬の配合がされていないからです。また、附子という生薬は小児に使うことはほとんどありません。したがって、ことアレルギー性鼻炎に関しては、麻黄附子細辛湯は一定の年代以上の方が、頓服的な使い方で症状の重いときに服用する使い方がもっとも適していると考えます。ある程度の長い期間服用するのであれば、胃などの消化機能(漢方での脾や胃)を助ける生薬である半夏や甘草、乾姜の含まれる小青竜湯を用いるほうがよいと思われます。小青竜湯は小児にもよく使いますが、以前も述べたように酸っぱい味が独特です(医療用製剤には、味のしにくい錠剤タイプもあります)。小青竜湯の麻黄でも胃腸障害を起こす場合は、苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)という処方で代用することがあります。葛根湯加川芎辛夷は、副鼻腔炎など、感染も重なって強い炎症を起こしている場合などに一度溜まった膿を出してやるために使う処方とも言えます。おなじみの葛根湯に鎮痛の作用をもつ川芎と、鼻の通しをよくする辛夷を配合したものです。

 西洋医学的な治療において、タラタラ鼻水の出る場合は抗ヒスタミン薬を中心に、流れ出てはこないけれど鼻づまり、鼻閉が中心の症状なら、抗ロイコトリエン薬を用いる等、症状によって成分を使い分けることが推奨されています。鼻はでてこないけれど鼻閉が強い場合、漢方でも麻杏甘石湯などを選択、併用することで症状をかなり緩和できるということは、前回もお話ししました。このタイプで、顔がほてったり、口渇があったりするような、熱のこもった感じがあり、特に結膜炎もある際には、越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)大青竜湯(ダイセイリュウトウ)を用いるとよい場合があります。大青竜湯は医療用製剤としてもエキス剤はありませんが、傷寒論(漢方の古典、コラムvol.8参照)では麻黄、桂枝、杏仁、甘草、石膏、生姜、大棗からなるので、越婢加朮湯(麻黄、生姜、大棗、朮、甘草、石膏)に麻黄湯(麻黄、杏仁、桂枝、甘草)のエキスを合わせることで代用することができます。

 さて、私自身のことですが、今シーズンは何故か症状がとても軽く済んでいます。朝と夜に小青竜湯麻杏甘石湯のエキスを服用したりしなかったりですが、それで十分事足りています。先月のコラムでは花粉症を克服できていないと書きましたが、経過をみるとどうも改善しているようです。何が変わったのかと考えましたが、シーズン前に生活習慣を見直して10kg近く減量したこと、腸内細菌のバランスを考えてビフィズス菌製剤を取捨選択して服用していたこと、あるいは体調を整えるためにいろいろな漢方を服用してきたこと、くらいしか思いつきません。おそらくは糖質やビールをかなり減らして体重を戻したことが、最も影響があるのではと自分では考えています。すなわち、前回述べた水湿や痰飲が軽快したためではないかと推測しています。薬より先に食ですね。

文責 三重大学附属病院漢方外来担当医・小児科専門医 髙村光幸

《参考文献》
医学生のための漢方医学基礎編(安井廣迪・東洋学術出版社)
山本巌の臨床漢方(板東正造編著・メディカルユーコン)
いかに弁証論治するか(菅沼栄著、東洋学術出版社)
EBMアレルギー疾患の治療2010-2011(中外医学社)
漢方診療医典(大塚敬節ら著・南山堂)
傷寒雑病論(東洋学術出版社)

《写真提供》
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最終更新日:2011年3月25日

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