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Vol.15 こころの病と漢方

最終更新日:2011年8月25日

コウブシ 前回は「かんのむし」や抑肝散(ヨクカンサン)についてのお話をしました。「疳」のむしとは、「肝」のむし、という人もあります。五臓六腑の「肝」は、以前も述べたように、現代医学の肝臓とは異なり、気や血をスムーズに流通させる機能を持つもので、気分や感情、情緒、自律神経と密接な関係にあります。特に怒りの感情と関連が強く、怒りがキーワードの症状に抑肝散を用いることが多いのは、肝の働きのバランスが崩れ、気が上昇しすぎるなどの状態を想定して、それを抑制するような意味合いをもつためです。いわゆる神経症とかノイローゼと呼ばれた症状の一部に対し、抑肝散を処方することがあります。イライラして怒りっぽい、という症状が最も適応になりそうです。現代医学では心(こころ)の病といいますが、漢方、特に中医学では、肝の病といったほうが近いかもしれません。五臓六腑の心の病(こころではなく、しん、ですが)というと、不眠や多夢、動悸、健忘、意識障害などが当てはまります。不眠を訴える場合に酸棗仁湯(サンソウニントウ)を用いたりします。就寝前に頓服的に服用して、睡眠剤の代わりに使うようなことがあります。ただ、毎日服用することで次第に眠りが良くなるような印象で、急に飲んですぐ眠れる、ということは少ないようです。動悸には炙甘草湯(シャカンゾウトウ)などを用いて、ドキドキが起こらなくなることがあります。甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)という処方も、不眠、情緒不安定、うつ病、統合失調症など、精神疾患に使われることがありますが、中身をみると甘草(カンゾウ:甘味料)、小麦(ショウバク:こむぎ)、大棗(タイソウ:なつめ)しか入っていません。また、てんかんに対しての漢方の代表といえば、この甘麦大棗湯になります。現代医学を知る立場から言えば、抗てんかん薬をやめて漢方のみで、というよりは、抗てんかん薬を使いながら、甘麦大棗湯などを併用して、どれだけ抗てんかん薬を減らせていけるか、というアプローチのほうがいいのではないかと思いますが、こんな食べ物みたいな漢方で少しでも症状がよくなれば驚きではないでしょうか。

 子どもたちの心身症、精神症状も、最近は、大人同様に多く見受けられます。精神科の薬をできるだけ使いたくないという気持ちもわかります。早い段階なら、漢方薬もひとつの選択肢でしょう。香蘇散(コウソサン)、半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)、加味逍遥散(カミショウヨウサン)、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)、小建中湯(ショウケンチュウトウ)、柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)など、その子の状態にあわせて選択はたくさんあります。しかし、漢方薬そのものの効果というより、それ以上に大事なのは、きちんと時間をとって、子どもたちと向き合うことにあるのではないでしょうか。漢方外来の多くは、一人一人の患者さんの時間を、通常の西洋医学の診察よりも長くとっています。ともすれば精神科の診療でさえ、非常に短い時間に限られることがあります。でも、それではわからないことがたくさんあるはずです。ゆっくり話を聞くことで次第に本質が見えてきて、思わぬきっかけで改善に結びつくこともあるでしょう。これは、とにかく多く診察して多く薬を投与するのが儲かる仕組みになっている(というより、そうしないと赤字になる)、日本の医療システムの問題から考えないといけませんが、少なくとも漢方外来は、それとは少し違うところにあるようです。再診料と処方箋料は、決して高額ではありませんし、保険診療の漢方製剤もそれほど高額にはなりません。開業医の漢方家の先生方は、どうやって採算をとっているのかな、と心配になるくらいです。 

 文責 三重大学附属病院漢方外来担当医・小児科専門医 髙村光幸

《参考文献》
医学生のための漢方医学基礎編(安井廣迪・東洋学術出版社)
小児疾患の身近な漢方治療シリーズ(日本小児漢方懇話会記録集・メジカルビュー)
専門医のための漢方医学テキスト(日本東洋医学会)
漢方方剤ハンドブック(菅沼伸監修・菅沼栄著・東洋学術出版社)
中医学の基礎(平馬直樹ら監修・東洋学術出版社)

《写真提供》
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電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
最終更新日:2011年8月25日

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