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Vol.38 夏場の食事と漢方

最終更新日:2013年7月25日

ソウジュツ  暑い日が続いています。どのようにこの暑い夏を乗り切るか。今回は食養生と漢方の視点で考えてみましょう。古代は今のようにいつでもなんでも食材が手に入るわけではなかったので、季節毎にその旬のものを食べていたことでしょう。そして冷暖房もなかったので、その季節の温度に合わせて、いろいろ生活の工夫をしていました。したがって、昔の生活の知恵をそのまま現代に当てはめるのは適当でない気もしますが、やはり夏ばて夏負けをしてしまう人はたくさんいます。十分参考にはなるでしょう。

  中医学的な食養生によると、夏は五臓のうち、心の機能が盛んになるとされます。心は火と関係があり、夏も火と関係があります。火とは、五行論の火です。五行論とは、この世の要素が、木・火・土・金・水からできているという考えで、古代中国の基本的な考えです。こんなことは全てに当てはまるはずもないのですが、ものの見方のひとつとして柔軟に考えてみましょう。当然夏は暑い。暑いものといえば火、とりあえずそのような単純な置き換えになります。ですから火(熱)を盛んにさせないような工夫が必要である、ということです。つまり、身体を冷やし、熱を冷ます食材で、味は酸味や苦み、塩辛い味が必要だとされます。トマト、ナス、きゅうり、ニガウリ、セロリ、スイカなどの野菜や、スモモ、桃、ビワなどの果物、肉なら豚肉、他には豆腐やウナギ、といった食材がその例です。しかし、いずれも摂りすぎはかえって身体に負担となることがあるので、適度に摂ることが重要です。また、生ものや冷えたものを摂りすぎてはならないことは、小さいときからよく聞かされたでしょう。貝原益軒の養生訓にもそう書いてあります。

 漢方薬はどうでしょうか。まずもともと夏ばてしやすい人は、この暑さの前に食養生や生活習慣できちんと身体を作っておく必要がありますが、その一助として、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)六君子湯(リックンシトウ)で消化機能を整えておき、清暑益気湯(セイショエッキトウ)などに切り替えるなどして調整すべきでしょう。また、夏場は食中毒が起きやすくなります。食中毒が細菌性なら抗生剤を優先すべきですが、その補助療法としても、藿香正気散(カッコウショウキサン、残念ながら医療用エキス製剤はありません)や附子理中丸(ブシリチュウガン)が適応となったり、五苓散(ゴレイサン)平胃散(ヘイイサン)、もしくはその2つを合わせた胃苓湯(イレイトウ)香蘇散(コウソサン)半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)などの出番となったりするでしょう。熱中症も毎年問題です。熱中症の標準治療に加えて、白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)を用いることで回復が早いことを以前発表したことがあります。黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)も適応になることがあるでしょうし、この薬を日焼けした際に服用させて悪化させないということをするときがあります。

 《参考資料》 

東方栄養新書(梁晨千鶴著・メディカルユーコン)
中医薬膳学(辰巳洋著・東洋学術出版社)
養生訓(貝原益軒著、伊藤友信訳・講談社学術文庫)
中医学ってなんだろう1(小金井信宏著・東洋学術出版社)
いかに弁証論治するか続編(菅沼栄著・東洋学術出版社)
Science of Kampo Medicine 漢方医学2012, 36(3)(髙村光幸ら) 

《写真提供》

株式会社ツムラさんのご厚意による
 

文責 三重大学附属病院漢方外来担当医・小児科専門医・医学博士 高村光幸
 

お問合せ先

福井市 福祉部 子育て支援課
電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
最終更新日:2013年7月25日

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