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Vol.49 処方解説(柴胡桂枝湯)

最終更新日:2014年9月25日

シツリシ 柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)について考えてみます。コラムVol.46で考えた、小柴胡湯(ショウサイコトウ)と、Vol.44の葛根湯の回でお話しした桂枝湯の、各半量ずつを組み合わせた処方です。したがってこれらと同じ『傷寒論』および『金匱要略』が出典になります。小柴胡湯は和解少陽剤(かいしょうようざい)という分類になり、身体に悪さをする外部からの「邪気」(病原)と、身体に備わった正気(抵抗力・免疫力)とのせめぎ合いで様々な症状が少陽という部位、すなわち半表半裏(はんぴょうはんり)というところを中心におこったとき、その争いを終わらせて仲直りさせる、和解させる処方であるとお話しました。また、コラムvol.44で桂枝湯は体表、すなわち「表(ひょう)」での争いを終了させ、症状を改善させる解表剤というタイプの代表薬ということもお話しました。表という部位、これは六病位(コラムvol.44参照)では、太陽病という時期になるので、柴胡桂枝湯は表症(太陽の邪)と半表半裏(少陽の邪)の両方の症状がある病態に対して用いる薬ということになります。具体的には、表熱症状や心下部の緊張症状が主な目標となります。この説明でよくわからないという方は、是非コラムのVol.44と46を併せて読んで頂ければと思います。

 しかししかし、柴胡桂枝湯という処方はとても不思議な処方で、とにかく応用範囲が広く、たびたびこのコラムでも処方名を挙げてきました。易感染性・虚弱体質(Vol.13)、疳の虫(Vol.14)、おねしょ(Vol.19)、立ちくらみ・起立性調節障害(Vol.24)、のところで言及しています。実際の臨床でも、いろいろ考えてどう治してよいかわからない、どうしても困ったときの切り札、のような処方として使うことがしばしばあります。少し古い病名となりますが、矢数道明という非常に高名な先達の処方解説本にも、感冒・流感・肺炎・肺結核・肋膜炎などの熱性疾患、胃痛・胃酸過多症・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・虫垂炎・急性大腸炎・潰瘍性大腸炎・膵臓炎・胆石症・肝炎・黄疸・マラリア・肝機能障害などの心下部緊張疼痛するもの、肋間神経痛・頭痛・関節痛・腎炎・腎盂炎・ノイローゼ・神経衰弱・多怒・不眠・ヒステリー・癲癇・脳症・寝汗・夜尿症・結膜炎・フリクテン・緑内障・皮膚そう痒症・女性の月経関連症状など、実に多岐にわたる疾患に用いることができると記載がされています。このほかにも、多くの文献にその応用病態の記録がありますが、どうしてそのように幅広く用いられるのでしょうか。これを考えると奥深く謎も多く残りますが、まず小柴胡湯という薬の万能薬的、ステロイド剤的な応用範囲の広さがあると思います。漢方ではからだに必要なもののバランスの崩れがすなわち病気であると考えていますが、その本来のバランスを調和する、調整する力が小柴胡湯にあり、桂枝湯のもつ、優しく気を補う力が加わることで、身体の調子を繊細に、巧みに、効果的に改善させるのだと思います。『傷寒論』の記載で、「柴胡桂枝湯を与えて其の営衛を和し、以て津液を通じれば」という文章がありますが、営衛(えいえ=営気と衛気)と津液いう身体にとって必要な要素(気・血・津液に相当)を調整することができるという、最も重要な漢方の治療目標の総合的調和が図れるところに、そのオールマイティ性があるのだと一人感心する今日この頃です。

 

 《参考資料》 

臨床応用漢方処方解説(矢数道明・創元社)
古典に生きるエキス漢方方剤学(小山誠次・メディカルユーコン)
中医臨床のための方剤学(神戸中医学研究会編著・東洋学術出版社)
 

《写真提供》

株式会社ツムラさんのご厚意による
 

【文責】 三重大学附属病院漢方専門医・小児科専門医・医学博士 高村光幸
 

お問合せ先

福井市 福祉部 子育て支援課
電話番号:0776-20-5270/FAX番号:0776-20-5490
最終更新日:2014年9月25日

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