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Vol.21 子どものトラブルと漢方(その3、頭痛)

最終更新日:2012年2月25日

川芎(センキュウ) さて、子ども達も思春期に入ると、もう少し違った問題を抱えてきます。頻度的に多い日常的トラブルは、頭痛、月経痛、にきび、立ちくらみ(起立性低血圧)などでしょうか。これらは成人でもよく相談を受ける症状ですので、思春期のみというわけではありませんが、背景にある問題がやはり思春期特有のものがあるような気がします。大人が忘れてしまった多感な時期のちょっとしたつまずきやストレス、成長に伴うホルモンバランスの不安定さ、あるいは恋の悩みなんかも知らず知らずのうちに原因になっていることがありそうです。そういう場合には1回でなんとかしようと思わず、何度か受診してもらううちに、ある種の信頼関係というか、逃げ場になるような相談先としての関係性を築き、精神状態の安定に持って行く必要があります。実際の小児科臨床現場ではなかなか時間がとれませんが、漢方の外来ではそういう関係性も作りやすいと実感しています(コラム15でも書きました)。ただ単に鎮痛剤などを出すのではすぐ行き詰まりますが、漢方は保険収載された150近くの処方を繰り出せる強みもあるので、一定の時間傾聴と共感を試みてから処方を選び、そしてもし無効だったとしても次にまだ手は残されている、見放しはしないよ、というサインを送り続ければ、改善に結びつくこともあるでしょう。これは私が常に、医療とは薬の力だけでなく、大きな意味でのプラセボ効果を伴ったものだと信じているので、特に重視している姿勢です。

 さて、具体例に少し触れます。常に机に向かい勉強したりパソコン作業したり、あるいは漫画や携帯をみたり、下を向く姿勢の多い思春期の頭痛には、筋をほぐす葛根や芍薬の入った葛根湯(カッコントウ)が効果のある場合があります。肩こりや目の疲れを訴える学生も多いものです。その場合、まず認知度も高い葛根湯を選ぶことがあります。ああ、それなら飲んだことある、という中高生も結構います。ただ、たいていは何らかのストレスが背景にありますから、ストレス緩和に関係する生薬、柴胡(サイコ)を含む処方群を併用することも多いです。それは抑肝散(ヨクカンサン)とか、四逆散(シギャクサン)とか、柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)などといった処方です。柴胡を含む加味逍遥散(カミショウヨウサン)も月経にまつわる頭痛によく用います。月経に関連する場合は、便秘の有無などを聞いて桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)もよく用いますし、神経過敏な状態に頭痛が伴うときには甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)を用いたりします。片頭痛に呉茱萸湯(ゴシュユトウ)というのも常套手段ですが、冷えが強ければ類似した当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)にしたり、天候に左右される頭痛、特に雨天前にでるもので五苓散(ゴレイサン)にしたりします。他に川芎茶調散(センキュウチャチョウサン)を片頭痛に使うことがあります。

 月経痛など他の思春期トラブルについては次回以降に続けます。

文責 三重大学附属病院漢方外来担当医・小児科専門医・医学博士 高村光幸

《参考文献》
山本巌の臨床漢方(坂東正造、福冨稔明編著・メディカルユーコン)
漢方診療医典第6版(大塚敬節ら・南山堂)

《写真提供》
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最終更新日:2012年2月25日

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